安室奈美恵の最新作にして傑作「_genic」。その魅力を司る”6つのジェニック”に迫る!

安室奈美恵の最新作にして傑作「_genic」。その魅力を司る”6つのジェニック”に迫る!


「FEEL」からおよそ2年ぶり。安室奈美恵から、話題性抜群の最新オリジナルアルバム「_genic」が届けられた。前作をしのぐ鋭いエンターテインメント作品でありながら、ポップ・アイコンとしての大衆意識も揺らぐことなく落とし込まれた本作は、安室奈美恵でなければ絶対に実現しなかったであろう高次元かつ昂然たるサウンド絵巻。遺伝子レベルで覚醒している劇的なアプローチの数々に、誰もが息を呑まずにはいられないはずだ。

今日は、そんな金字塔的アルバム「_genic」を抜かりなく楽しむために、同作にまつわる魅力を6つのセクションに分けて紐解いていく。あらかじめ断言しておくが、本当に、凄いアルバムなのだ。

文:白原ケンイチ

genic_1:女帝の余裕を物語るアルバムタイトル


アルバムタイトルになっている「_genic」は、接尾辞として「〜に適した」「〜向きの」といった意味を持つ英単語。「安室はサウンドジェニックかダンスジェニックか、はたまたフォトジェニックなのか。自由にイメージしてもらいたい」という制作サイドの意向が反映されているそうだが、これは裏を返せば、「誰にどこから見聞きしてもらっても私は安室奈美恵だ」と冷静に宣戦布告しているようにも映る。「心で感じて欲しい」と願い謳った「FEEL」からまたしても駒を進め、もはや手放しで世間のイメージをコントロールする安室奈美恵。その凄まじい全能感を、まずはこのタイトルで思い知るべし。

genic_2:加速する温故知新ワールド。未だかつてないハイブリッドな音楽性


今回安室がキーワードに掲げたのが、アメリカをはじめ昨今の音楽シーンを沸かせているリバイバル。80年代のダンスミュージックやニューウェイブ、90年代のヒップホップ/R&Bなどかつて一世を風靡したサウンドを取り入れ、独自の調理によって革新的なポップミュージックへと消化している。代表的な例を挙げると、ギターカッティングが印象的なOPチューン「Photogenic」や一途すぎる恋心をパーカッシヴに描いた「Golden Touch」では自身のルーツにもあたるR&Bを、安室初のバースデイ・ソングとして話題を呼んでいる「Birthday」やレゲトンとEDMを掛け合わせたような仕上がりの「Stranger」ではディスコを筆頭とした80’sポップのファクターをそれぞれ下敷きとした跡が見て取れ、懐かしさと新しさの共存が楽しめる。無論、安室ほどの人物がリバイバルに対してモチベーションを露わにした以上、今後のジャパニーズ・ミュージックの潮流にも大きく影響していくことは確実だ。

genic_3:シングル曲ゼロ&全曲ノンタイアップ・・・自信を証明する収録ラインナップ


「_genic」には、安室奈美恵史上初の試みが数多くセッティングされている。その最たる偉業のひとつとして、本作にはシングル曲が一切収められていない。コンセプトにそぐわないとして既発曲(「BRIGHTER DAY」など)の収録を見送った結果とは言え、CD不況の現代にリード・トラックなし(くわえて全曲がノンタイアップ、全体のほとんどが英語詞)で臨むのは、ベテランのアーティストでもなかなか出来ない芸当だ。それでいて、聴けば聴くほど絶対的にハマってしまうのだから、安室奈美恵の音楽はやめられない。

ちなみに、同じく安室初のアプローチとして、本作には歌詞カードに和訳が付いている。ファンの間でたびたび議題に上がっていた”英語詞優先による感情移入のストレス”も、これで大幅に軽減されるのではないだろうか。